放浪コラム

 2005年11月 »

プレゼンテーションスキル(5)

プレゼンのスキルをどうあげる?

簡単にスキルアップするのは正直無理です。なので、どの会社もウェブ関連に限らず、勝敗を決めるプレゼンテーションには、エース級を投入し続けるんじゃないでしょうか?何年経っても、会社中の一番のエースが登板し続けなければならない・・・。後続にとっては、機会も与えられないのだから、エースとの差は開く一方。

研修などでプレゼンをやってみても、やはりそこは本番の緊張感とは雲泥の差。本番を数こなさないとこのあたりのスキルはあがりません。場数です。様々な、

People  誰にプレゼンするのか
Purpose  プレゼンの目的は何か
Place   どこでプレゼンするのか

を経験することにより、場の空気を読みながら柔軟に対応できる能力が身につくのです。もちろん、柔軟な対応の表現手段も、93%非言語。

では、エース以外はどうすればいいのでしょうか?

練習です。これに尽きます。ある案件が持ち上がったら、とにかく手を挙げます。で、資料が完成したら、30回、100回、200回。とにかく練習するのです。リハーサルするのです。誰か聞き手を用意して。奥さんでも彼女でも、息子さんでもいいでしょう。最初はぎこちなくて、聞くほうも苦痛なんですが、50回を超えるあたりから、かなり聞きやすくなります。200回、300回になれば、恐らく相手が感動して涙を流すまでになるんじゃないですか?大げさに聞こえるかもしれませんが、やってみればわかります。疑問に思っている貴方は、そういう練習をやったこともないし、自分の思いを一生懸命相手に伝える努力を軽視する人なのかもしれませんよ。

プレゼンテーションスキル(4)

さて、プレゼンでの重要な戦略要素である、

People  誰にプレゼンするのか
Purpose  プレゼンの目的は何か
Place   どこでプレゼンするのか

については、前回までで触れましたが、当日配布する企画書や資料の件は別項に譲るとして、当日の話。まさに胃が痛いですね。

中身に関して充分に準備することも重要ですが、内容を、表情や、声の抑揚、ボディランゲージ、アイコンタクトなど、「非言語」系でめいっぱい表現することも重要。聞かせるテクニックも必要です。相手が寝るようじゃ、もうそのプレゼンは失敗。

先日、名古屋の某大学でゼミの講義を90分引き受けたのですが、担当の先生に用意していただいた部屋が、パソコン実習室で、喋る位置は学生からはるかに遠い教壇の奥。間に、学生のパソコンもあれば、先生用のモニターも。これでは「非言語」が伝わらない。

先生の了解を得て、学生のまん前まで進み出て、話をさせていただく。おかげで「お互いに」非言語も含めた情報の伝達が達成できて、楽しい時間になった。

日本看護学会でシンポジウムに参加したときも、僕の後で発表を行った小笠原先生は、演壇を無視して、全身が参加者から見える位置まで出て行って喋られた。参加者は先生の「非言語」も最大限に使った講演に引き込まれ、大勢の人が涙した。僕も泣いた。

(このシリーズまだ続く)

プレゼンテーションスキル(3)

本日から上海に旅立ちます。お客様に迷惑かけないよう、仕事目的ながら週末利用して行って来ます。今はいつもどおり近所のカフェにいるのですが、明日先方のCEOに見せるプレゼン資料ができていない・・・。ここ更新する前に早く仕上げろ!というところですが、プレゼン資料って現実逃避の特効薬ですね。仕事がたまっている人は、大事なプレゼン、しかも事前資料を充分に準備しないといけないプレゼンの予定を入れることをお薦めします。たまっている仕事がどんどんなくなりますよ。大事なプレゼンはいつまでも完成しませんがー。

People  誰にプレゼンするのか
Purpose  プレゼンの目的は何か
Place   どこでプレゼンするのか

事前準備の中でも案外気にしないのが場所の問題。

僕は独立以来、数年前までコンペとしてのプレゼンでは連戦連勝。不敗神話さえできてました。その不敗神話が崩れたのが某医科系大学でのプレゼン。控え室で待っていて通されたのは大きな教室。教卓がドーン。聞く側の先生方は約60人。なんだよ、その人数。間になんだか教育用のシステムがガチャガチャあって、先生方の顔も見えにくい。資料の入ったPCを置く位置は決められてしまって、立ち位置も制限。加えて聞き手の先生方の座っている机にはデスクトップのPCがあって、みんなそっちの画面ばっかり見ている。どうも、ウェブメールしたり、ネットサーフィンしている雰囲気。

う!何を言ってもその場でググられてしまって裏取られちゃうじゃんかよ・・・。しかも一所懸命顔見てもアイコンタクトなんか不可能。先生方間もなんとなく緊張感が漂っていて和やかな雰囲気など出そうもない。これは厳しいー。

と思っていたらペースが出ないまま終わってしまって疲労感がたっぷり。案の定、落選です。場所のことをもう少し聞いていたらアクロバットな準備もできたかもしれませんし、心の準備をしておいて、教室内をうろうろするような作戦も取れたかもしれません。リハーサルにも力入れたでしょう。悔やまれます。

プレゼンの話が出たら、目的はもちろんですが、参加する人、発表する場所の情報は細かく細かく聞きましょう。

(このシリーズまだ続く)

プレゼンテーションスキル(2)

プレゼンの話の続き。

昨日コメントいただいた、masaさんはまさにD大学(いまさら伏字)のプロジェクトの企業側のリーダー。ミヤモトさんはまさにまさに発表者の学生さん。ブログの手軽な更新性と伝播力に脱帽です。つーか、当事者前にすると書き進めにくいな(汗)

People  誰にプレゼンするのか
Purpose  プレゼンの目的は何か
Place   どこでプレゼンするのか

相手の顔ぶれを相対的に把握して準備をしないといけない話はしましたが、目的(Purpose)は、それ以上に重要。というか大前提。

声を大にして言うほどではないと思うかもしれないですが、

・で、いいたいことはなんなの?
・何言いたいんかさっぱりわからんわ。
・一般論はいいから、どうしたいの?おたく?

というプレゼンが世の中にあふれています。この僕も含めて。シナリオライターとしての腕があって、それなりの素材が集まっていればこういう問題は起きにくいんでしょうけど、経験浅くて、時間もない中ではなかなか難しい。そういう場合は、もう、目的をとにかく明確にして、冒頭に目的と結論をズバっと持ってくることですね。プレゼン終了前にももう一回大きな声で言うストーリーにしましょう。これで形はできます。

人は最初はまだ多少は集中してくれてます。また、終わりが見えてきた頃にも再度集中してくれます。そこを狙います。合間は極端な話、捨てて出るぐらいの覚悟で。(嘘)

目的も、結論(概論)もなくスタートするプレゼンは聞いているとけっこう苦痛。悪いプレゼンを見たときの自分の気持ちって重要です。そういう時はチャンスと思ってがんがんメモりましょう。

目的を考える際、これはこれで発表側の論理の終結(押し付け)を目的にするのではなくて、やはり聞き手側が利益と感じる「目的」を考えたいですね。

さて、実は本日も午後から某専門学校で学生たちのプレゼンを聞く機会があります。楽しみですが、教える側としてはどきどきです。

(このシリーズ続く)

プレゼンテーションスキル(1)

先日、同志社大学で、あるゼミのお手伝いをしました。お手伝いと言うと叱られてしまう。内容は学生の方々のあるプロジェクトに向けた10分間のプレゼンテーションを5組拝見し、それぞれに感想を述べるというもの。どちらかといえば、感動し、気付かされ、僕自身が勉強した時間と言えます。機会をいただきありがとうございました。

僕自身は人前で喋ることが嫌いでは無いので、あちこちで喋っているうちに場数だけは踏んできたのですが、今でもやはり緊張します。終わったあと、ガッツポーズが飛び出るぐらいうまくいくこともありますが、全然駄目で、猛烈に落ち込んでしまうこともしばしば。この原因は決して体調などではなく、準備不足ということがほとんどです。なまじっか喋りに自信があるばっかりに、準備をおろそかにして本番にかけることがあるのです。なんとも勢いだけでリカバリーはできないものですね。

普段から情報シャワーを浴び、アンテナを張っておくことも重要ですが、プレゼンにはプレゼンの準備の王道があります。

よく3つの「P」として語られます。

People  誰にプレゼンするのか
Purpose  プレゼンの目的は何か
Place   どこでプレゼンするのか

案外こういうことを無視して、参考書からの抜粋ネタやチャート引用、統計ネタだけで準備してしまうことが多いのではないでしょうか。「誰」という部分は絶対的な「誰」ではなくて、相対的な「誰」で考えるべきです。相手と自分の関係がどうなのかが重要。初対面か顔なじみか。プレゼン内容に関する知識はどっちが上か。相対的な考え方は相手側出席者の顔ぶれも頭に入れておかねばならないでしょう。

(このシリーズ続く)

NPO法人どんぐりネットワークに思う

酷暑の昨夏の2004年8月21日、NPO法人どんぐりネットワークの総会後に講演の時間をいただきました。諸先輩方を前に恐縮で、学ぶことの多さを実感した時間でした。暑い中、ありがとうございました。

下記は、その時の発言要旨です。尻切れトンボですが、追々追記します。

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どんぐりネットワークの今後には課題が山積している。県からの委託事業を中心に活動をしてきたわけだが、実際問題、財政厳しいこの時期、早ければ来年度予算からは県民参加の森作りに税金が投入されることは減るだろう。また、構成するスタッフも、新しいスタッフが常時供給されるような代謝にはなっておらず、組織としての活性化、拡大化がなく本来の目的達成には何がしかの対策が必要だ。特に、若い世代を取り込んでいかないと次世代のどんぐりネットワークの活動は厳しい。現在のベテラン世代の知恵を受け継ぐのは今がチャンスであろう。

組織には、

・経済的資本
・人的資本
・文化資本
・社会的資本

がある。この中で社会的資本とは「人々が相互に築く関係に内在する力」であり、人と人の関係性がもたらすメリットである。これは組織内外を問わない。普段会わない弱い関係の方からより良き情報を得たりすることも多いだろう。これはその組織が持っている社会的資本ともいえる。

社会的資本を築いていくとき、よく語られるのが「媒介中心性」だ。これは、人と人がネットワークとして関係していくとき、特定の人が繋ぎ役を担っていることが多い。ネットワーク図を作ってみて、何人にもの繋ぎ役を担っている人を、「媒介中心度」が高いと言う。

どんぐりネットワークへの関わり方にも、この媒介中心の考え方が当てはまる。ある日、あるよく参加している家族Aさんの子供のB君の友人C君が、ひとりだけAさん一家に混じって、どんぐりのイベントに参加する。C君は戻ってお母さんのDさんに楽しそうに話す。DさんはC君のきらきらした瞳を見て、次のイベントにAさん家族と一緒に参加すると決める。Dさんは参加してみてその面白さに驚き、次のイベントには夫のEさんと、別の家族Fさんファミリーを誘う。さらに、Dさんは、学校のPTAの活動もしていて、先生に話して、総合学習の実施場所にどんぐりランドを選んでもらう。Dさんはそれに留まらず、職場のお花見も、従来の宴会だけを中止して、どんぐりランドでクラフトも兼ねた家族参加の楽しいイベントを提案・・・。

というように、この場合はDさんが媒介中心度が高いわけだ。どこの組織にもこういう人はいて、この媒介中心度が高い人がどれだけ組織にいるか、どれぐらい元気かによって組織の活性化は違ってくるようだ。特に組織外への働きかけ度が高い人がいるかいないかで、その組織が閉鎖的かどうかが決まる。

どんぐりネットワークも、この媒介中心度が高い人が誰なのかを組織内を見渡して選び、その人物に積極的に動ける環境を提供することが求められる。その際、きちんとした「森と人間の関わり」を理想的に定義したNPO法人どんぐりネットワークの設立趣旨を深く理解しておくことが重要だ。だが、これは頭で理解したようでなかなか人に伝えたり、自分自身が体現できたりするものではない。

そこで僕が提言するのは、「森、木」の「媒介中心度」を高めるという方法。今でも擬人化されていないだけで、「森、木」があるから、どんぐりネットワークの人と人はつながっている。組織内における「森、木」の媒介中心度は最高値ともいえる。それを、普段から意識して、組織外の人と接するときも、その人と自分との間に「森、木」を置いて考える習慣を持ってはどうだろう。

古代ケルト語では、「木」と「学ぶ」は同義語だったそうだ。

2004年8月21日 森田桂治

どんぐりネットワークの活動

2005年7月8日に行われた、日本看護学会でのシンポジウム時の発表要旨。川井郁子さんのヴァイオリンを演奏するときとは違った、穏やかな口調での経験談。多田伸治さんのさぬきの夢2000にかけた情熱。そして、日赤で20年勤務され、現在は四万十川のほとりの医院で在宅医療を続けられている小笠原先生。こんな方々と共にシンポジウムに参加できたこと、一生の光栄です。県民ホールの大舞台は二度と踏めないだろうなぁ。

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香川県はおむすび型の山や、屋島、五色台と言った台形状の山などが特徴的ですが、今、深刻な問題が森で起こっています。

竹林の勢力が拡大して、里山全体を覆う形で増殖しています。東京などから高松空港に降りる際に窓外を見るとわかりますが、多くの山が天辺まで竹林化しています。しかも整備された竹林ではなく、竹やぶ。

元々、食材としてのタケノコや、住居、家具、農作業などで竹材と利用されていたものが利用されなくなり、放置されたのが原因です。その強力な成長力(一年で5メートル地下茎が延び、地上茎は2,3ヶ月で十数メートルも延びる)で、畑や山林に侵食し、暗い森を作り、他の草木を枯らします。

放置された竹林は、生物の多様性が失われた森になってしまい、水の保水機能も落ちます。何より、土壌崩壊を招き、昨年の台風でも多くの場所で竹林の一部がそのまま塊となって地滑りを起こしました。地球規模の問題で言えば、CO2の吸収力も落ちます。

私はまだまだ諸先輩方と並ぶと若輩者なのですが、それでも子どもの頃の山、森の風景と、今の里山の風景はかなり違います。一方では松林が減り、コナラ、クヌギの森が広がっています。生物の多様性という意味では、僕の子どもの頃よりも香川の里山は豊かになっているのかもしれません。クワガタやカブトムシが取れる樹というのはほとんど決まっていて、早起きして先陣争いだったものですが、今ではちょっと里山に足を踏み入れればたくさんの昆虫がいます。

ただ、一方では先の話のようにその豊かな森を侵食する、しかも急速に拡大中の竹林があります。これは、竹害ともいうぐらい深刻です。そもそも、里山、雑木林の一角に竹を植えたのは人間です。それを使わなくなって、放置したのも人間。既に行政抜きでは手をつけられないぐらい、それでも無理なんじゃないかと言うぐらい増殖しているわけで、ある意味、昔のSF映画の怪物なみです。

では、現代社会において竹は悪者なのかと言うと、やはりそれは違うだろうと考えます。竹が持っているパワーは素晴らしいものがあります。竹材として、食材として、燃料として。何よりその成長力を考えると、エネルギー問題の解決策は竹じゃないのかと言う説も強いほど。竹炭、竹酢液などの効能はよく知られていますね。

私たちは、NPO法人どんぐりネットワークとして、里山再生に取り組んでいるわけですが、特に、この竹の問題に焦点をあてています。単純に竹を駆逐すると言うのではなく、有効な資源として活用できるようにと考えながら活動を進めています。参加しているメンバーは会社員、主婦、学生、教員、マスコミ関係者他バラエティに富んでいるわけですが、もちろん、皆が皆、問題意識が強いわけではありません。単純に、週末に森で遊びたいだけの方もいれば、本気で循環社会実現のために勉強している人もいます。竹炭を焼く際に燃えている火を見ているだけで癒されて幸せ・・・・という方も。私のように会社経営をしているものが、その方針に共感して法人として入会している方もいます。

モットーは、「森で楽しく過ごす!」です。

活動は、竹林を整備し、できた竹材で竹炭にしたり、クラフトをしたり、タケノコを食べたり。お世辞にも竹林拡大阻止を担っているとは言えません。半分素人が週末だけの整備では本質的には解決しません。ただ、次代を担う子どもたちはもちろん、昔、野山で遊びまくった大人たちにも、今一度、森の楽しさを実感してもらい、思い出してもらい、毎週のように森に通ってもらうようになることで、「あれ?今の森で起こっていることは、ちょっとまずいぞ。」と気付いてもらえればと考えています。そして、楽しさと一緒に、起きている問題点をひとりひとりが周囲に拡げていってもらえれば、竹林の拡大に追いつけるのではないかと。

マスコミの活用、学校の総合学習への支援、様々な公的な行事への協力などで、幅広い啓蒙活動なども重要です。ただ、そのためには問題意識を持ったスタッフ、仲間が必要。そのためには「楽しい!」だけで参加してくれる多くの森好きが必要です。そして、次世代を考えると「森ガキ」が必要です。

どんぐりネットワーク自体も、実は精力的に頑張ってくれているスタッフの多くは、60歳以上のベテランです。この方々の経験に基づいた知恵を受け継ぐには、もっと多くの若手が参加し、その子どもたちを引き連れ森で遊ばないといけません。日本人が持っている、森と共に、竹と共に培った知恵の伝承を私たちの世代で絶やしてしまってはいけないと考えています。

2005年7月8日 森田桂治

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