02/152011

最初にWorld Wide Webを見た時を超える体験を求めて

僕は1992年に株式会社日立製作所に入社し、11月の頭に名古屋に営業で配属されました。担当したのが文部省所管の大学と研究所だったんですが、中でも岡崎市の分子科学研究所は僕のビジネスマンとしての生き方に多大な影響を与えてくれたところです。当時は岡崎国立共同研究機構という組織名称の中の分子科学研究所ですが、同じ組織内の生理学研究所、基礎生物学研究所、附属図書館とあわせますと、日立時代だけでもかなりの仕事をいただき、その後転職した日本シリコングラフィックス株式会社(現日本SGI株式会社)、そして今代表している株式会社ゴーフィールドと、元請、下請け諸々足し算すると、15億円近い売上高になります。ありがとうございます。

で、仕事、お金以上にありがたいのが、この分子科学研究所(分子研)においてのインターネットとの出会いがなければ、今の僕の事業分野もなかったなということです。

当時、僕は日立の駆け出し営業マンというか鞄持ちだったわけですが、分子研には日立及び日立の協力子会社群から選び抜かれた優秀なSEが10人近く常駐していて、みんながみんな妙なノルマに縛られず、のびのびと業務に集中していました。煩い仕事をしない上司もいませんし、お客さんとの良好な関係の下で、お客さんと共に、最先端を行くチャレンジが日々行われていたのです。当時日立では独自のパソコンやワークステーションを販売していましたが、そこのSEさんたちはそんなものは使わないで、お客さんに借りたDECマシンや、自分で買ったMacなどを使って、自由に業務をやってたんです。今で言うとギークでアーリーアダプターの集団が一箇所に固まってる感じですね。

僕はそんな空気が好きで、なんか理由作っては分子研の中の日立部屋に入り浸って、SEさんたちが嬉々として説明してくれるチンプンカンプンな面白いことをわかったように聞きながら、へぇの数を増やしていました。

そんなわからんなりに聞き役をする僕をお客さん方も可愛がってくれて、計算工学の世界の有名な先生方がいろいろ素人向けに説明などしてくれました。助手や技官の方々からもHPから供給された日立ブランドHPマシンを買ってくれたりする中で、いろいろとコンピュータ、そしてインターネットの面白さを教えてもらいました。(もっと大事なのは秘書の方々に気に入られることでして、せっせと名古屋の美味しいケーキなどをお土産にしてました)

ある技官の方に、

「森田君、営業マンでもこれからの時代は電子メールは必要だよ。僕から上司に言ってあげるから電子メールのアカウントを申請したら?」

と助言を受け、「電子メール保有しないと次の商売をいただけません」と大げさに申請して、中部支社の営業の中では特例で電子メールを使うことになりました。このとき、「@」の前にあったのが、

kmorita

というアカウント名で、今もこの「kmorita」が僕のアカウント名の基本になっています。当時は「ファーストネーム+苗字の一文字」という方がアカデミック分野には多かったのですが、「keijim」だと誰かわかりにくいね、ということで「kmorita」にしたのを覚えています。

それからは他大学のお客様に対しても、「電子メールを使う営業!」ということでコミュニケーション頻度が自然と上がっていきまして、成績もうなぎ上り。ただ、当初は共有PCでコマンドラインでメールって言う感じで恐ろしく使い難く、我慢できずに先輩SEたちの助言もあってMacを買いました。ボーナス吹っ飛びました。

結果、お客さんとのコミュニケーションはさらに円滑になり、Macでしか使えなかったEXCELで効率的に事務作業をし、マックドローで緻密なネットワーク図や構成図を提案し、さらに成績は上がりました。

電子メールをきっかけにしたネット人生は僕に大きな影響を与えたのですが、もうひとつが、Webとの出会いです。

分子研においてある日、先輩SEさんやお客さんがまるで子供のようにはしゃいでいる日がありました。

「森田よ、これ見てみろ。面白いぞ!」

と言って見せてもらったのが、World Wide Web。その時のブラウザはHP-UX上で動いていたMosaicでした。分子研ではすぐに独自のWebサーバを立ち上げましたが、わずかな差で高エネ研に負けたんだったと思います。

この時の衝撃と言うか、想いがその後の僕のエネルギーになっていることは間違いありません。あの時の未来に拡がっていくわくわく感を超える体験は正直なところ、その後出てきたどんなサービスでも味わっていないのですが、あの時の感覚が僕の指標になっているんだと思います。

Twitterでもない、facebookでもない、あの時の気持ちを超えるわくわくを感じさせてくれる何かが出てこないかなと今でも待っています。

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